低賃金

介護士と看護師における賃金格差

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介護士と看護師における賃金格差

介護士と看護師における賃金格差は大きい

前回の記事(介護職員はなぜ低賃金なのか?)から介護職員における低賃金の原因として、社会保障費の増大による介護報酬の減額と介護サービスが公定価格であるため収益上限が一定であることが挙げられます。
しかし、このことは看護師にも同様のことが言えることになりますが、看護師は介護士に比べて平均給与が高い状況です。
なぜそのような賃金格差があるでしょうか。

介護データ・用語定義

この記事の中で扱う数字や用語の説明です。

介護データ

32万9,200円
看護師に対するきまって支給する現金給与額
平成27年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
22万3,500円
福祉施設介護員に対するきまって支給する現金給与額
平成27年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)

介護関連用語

きまって支給する現金給与額

労働契約、労働協約あるいは事業所の就業規則などによってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって6月分として支給された現金給与額をいう。手取り額でなく、所得税、社会保険料などを控除する前の額である。
現金給与額には、基本給、職務手当、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などが含まれるほか、超過労働給与額も含まれる。1か月を超え、3か月以内の期間で算定される給与についても、6月に支給されたものは含まれ、遅払いなどで支払いが遅れても、6月分となっているものは含まれる。給与改訂に伴う5月分以前の追給額は含まれない。
現金給与のみであり、現物給与は含んでいない。

賃金構造基本統計調査で使用されている主な用語の説明(厚生労働省)
以下、本ページでは月額給料として扱います

年間賞与その他特別給与額

調査実施年の前年1年間(原則として1月から12月までの1年間)における賞与、期末手当等特別給与額(いわゆるボーナス)をいう。
賞与、期末手当等特別給与額には、一時的又は突発的理由に基づいて、あらかじめ定められた労働契約や就業規則等によらないで支払われた給与又は労働協約あるいは就業規則によりあらかじめ支給条件、算定方法が定められていても、算定期間が3か月を超えて支払われる給与の額および支給事由の発生が不確定なもの、新しい協約によって過去にさかのぼって算定された給与の追給額も含まれる。

賃金構造基本統計調査で使用されている主な用語の説明(厚生労働省)
以下、本ページではボーナスとして扱います

介護士と看護師における給料の差

まず、介護士と看護師の月額給料とボーナスにおいてでどの程度の差があるのかを厚生労働省の発表データを基に調べてみました。

職種 月額給料 ボーナス
看護師 32万9,200円 83万2,700円
准看護師 27万7,400円 63万8,500円
医師 84万8,400円 80万1,600円
介護支援専門員(ケアマネージャー) 26万1,600円 56万7,300円
ホームヘルパー 22万5,100円 34万1,900円
福祉施設介護員 22万3,500円 47万9,000円
平成27年賃金構造基本統計調査より算出

医療業界として看護師、准看護師、医師のそれぞれの月額給料とボーナスの算出結果ですが、医師がやはり突出して高い給料となっています。
介護業界としてはケアマネージャー、ホームヘルパー、福祉施設介護員で、最も高いケアマネージャーでも医療業界の最も低い准看護師に及ばない結果になっております。
ホームヘルパーや福祉施設介護員については、看護師と比較すると月額給料が10万円以上も低くなっているので、賃金格差が顕著になっている状況です。

介護士と看護師における給料の世代間格差

以前は年功序列による年齢に応じて給料が増えていく賃金システムが一般的でした。
現在では、業務の結果によって評価する成果主義による考え方が増えてきて年功序列の傾向は減ってはいますが、医療業界に限らずどんな業界においても依然として年齢による給料の差があります。
しかし、医療業界に比べて介護業界ではどの世代においても給料の差が少ない状況で、年功序列の影響が少ない業界と言えます。

看護師の年齢別の月額給料とボーナス

世代 月額給料 ボーナス
20~24歳 28万5,000円 50万7,000円
25~29歳 31万9,200円 80万8,400円
30~34歳 32万4,400円 81万9,800円
35~39歳 33万3,500円 87万5,900円
40~44歳 34万8,800円 94万5,000円
45~49歳 35万5,700円 98万0,800円
50~54歳 35万2,200円 95万1,600円
55~59歳 36万1,800円 104万6,400円
60~64歳 30万1,500円 64万1,300円
65~69歳 31万9,400円 44万6,000円
70歳~ 35万0,400円 53万5,100円
看護師の世代別給料

看護師では月額給料とボーナスともに55~59歳の世代が最も多い結果です。

准看護師の年齢別の月額給料とボーナス

世代 月額給料 ボーナス
~19歳 15万5,700円
20~24歳 21万6,500円 31万8,400円
25~29歳 24万1,300円 48万4,200円
30~34歳 25万4,700円 51万5,900円
35~39歳 26万4,400円 54万6,200円
40~44歳 27万3,600円 65万0,200円
45~49歳 28万2,400円 67万9,700円
50~54歳 29万9,800円 76万6,800円
55~59歳 30万1,000円 79万2,500円
60~64歳 27万3,500円 56万7,800円
65~69歳 24万4,700円 39万2,500円
70歳~ 27万5,400円 29万5,200円
准看護師の世代別給料

准看護師も看護師と同様に月額給料とボーナスともに55~59歳の世代が最も多い結果です。

医師の年齢別の月額給料とボーナス

世代 月額給料 ボーナス
20~24歳 39万1,300円 0円
25~29歳 51万5,200円 27万4,700円
30~34歳 61万5,100円 51万6,900円
35~39歳 75万2,900円 90万5,100円
40~44歳 97万5,700円 106万6,700円
45~49歳 109万1,900円 143万0,100円
50~54歳 122万1,500円 133万7,000円
55~59歳 138万5,300円 113万9,300円
60~64歳 161万4,800円 100万9,000円
65~69歳 130万7,100円 145万3,600円
70歳~ 117万0,600円 39万9,600円
医師の世代別給料

月額給料では60~64歳、ボーナスでは65~69歳の世代が最も多く、看護師や准看護師よりも年功序列の傾向が強いです。

ケアマネージャーの年齢別の月額給料とボーナス

世代 月額給料 ボーナス
20~24歳 22万8,900円 25万8,000円
25~29歳 24万5,000円 51万9,000円
30~34歳 25万5,300円 42万8,300円
35~39歳 26万3,200円 57万7,200円
40~44歳 26万6,400円 62万4,400円
45~49歳 26万8,000円 58万8,000円
50~54歳 26万8,100円 66万3,500円
55~59歳 26万1,800円 58万6,700円
60~64歳 24万1,300円 46万8,800円
65~69歳 25万9,700円 21万2,200円
70歳~ 19万9,600円 23万6,800円
ケアマネージャーの世代別給料

月額給料では50~54歳、ボーナスでは40~44歳の世代が最も多くなっており、医療業界ほどの年功序列の傾向は見られません。
また、月額給料も20~24歳と50~54歳を比べても約4万円程度の差しかありません

ホームヘルパーの年齢別の月額給料とボーナス

世代 月額給料 ボーナス
19歳~ 17万4,100円 5万5,800円
20~24歳 19万4,300円 20万0,000円
25~29歳 22万9,500円 31万4,500円
30~34歳 24万6,100円 37万0,900円
35~39歳 22万8,100円 32万3,800円
40~44歳 22万3,000円 35万4,000円
45~49歳 23万1,700円 33万0,600円
50~54歳 22万5,400円 40万7,200円
55~59歳 22万1,000円 38万4,500円
60~64歳 22万3,000円 40万9,400円
65~69歳 19万8,300円 17万7,300円
70歳~ 24万2,500円 12万8,300円
ホームヘルパーの世代別給料

月額給料では30~34歳、ボーナスでは60~64歳の世代が最も多くなっており、月額給料とボーナスの構造が歪んだ形になっています。
また、ホームヘルパーの特徴としてはボーナスも一定して少なくなっています。

福祉施設介護員の年齢別の月額給料とボーナス

世代 月額給料 ボーナス
19歳~ 17万5,900円 10万4,200円
20~24歳 20万3,100円 38万6,000円
25~29歳 22万0,900円 48万6,800円
30~34歳 22万9,800円 52万6,900円
35~39歳 24万0,400円 56万0,800円
40~44歳 23万3,400円 53万3,800円
45~49歳 22万8,400円 46万8,700円
50~54歳 22万8,400円 52万2,700円
55~59歳 22万6,200円 49万6,100円
60~64歳 20万0,400円 34万9,500円
65~69歳 18万7,900円 23万8,200円
70歳~ 17万1,300円 16万0,500円
福祉施設介護員の世代別給料

月額給料とボーナスともに35~39歳の世代が最も多くなっており、給料のピークを迎えるのがかなり早いです。

世代間での最も開きのある給料差をまとめると次のようになります。

看護師
  • 月額給料:8万1,300円
  • ボーナス:60万0,400円
准看護師
  • 月額給料:14万5,300円
  • ボーナス:49万7,200円
医師
  • 月額給料:122万3,500円
  • ボーナス:117万8,900円
ケアマネージャー
  • 月額給料:6万8,500円
  • ボーナス:45万1,300円
ホームヘルパー
  • 月額給料:7万2,000円
  • ボーナス:35万3,600円
ケアマネージャー
  • 月額給料:6万9,000円
  • ボーナス:45万6,100円

医師については極端すぎてあまり参考にはなりませんが、医療業界よりも介護業界のほうが年齢における給料の差が少ないことがわかります。

前述したように介護業界はあまり年功序列の傾向が見られません。
医療業界などと同じような水準で年功序列による賃金アップすることができれば介護業界も低賃金問題も解決に向かうのではと思います。
介護業界は2000年に介護保険制度が始まってからまだ歴史が浅く、介護保険制度の仕組み自体もまだ発展途上にあると言えます。
賃金体系についてもまだ明確な仕組みや基準がないことが考えられ、今後の介護保険制度の発展とともに賃金体系も標準化されていくことになるかもしれません。

また、年功序列ではなく他の方法で賃金アップを目指すのであれば介護関連の資格取得が挙げられます。
介護業界は資格取得手当などで賃金アップを見込める部分はありますが、上記の月額給料の表はすべてきまって支給する現金給与額であり、資格取得による職務手当も含まれた給料になります。
つまり、現時点では年功序列も資格取得も共に、十分な賃金アップを期待できない状況であると言えます。
この状況を打開しなければ、現在の介護業界における喫緊の課題である人手不足の問題を解決することが難しくなるのではないでしょうか。

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